作:早川ふう / 所要時間 5分 / 20170916 利用規約はこちら

ボクは、にゃんた -だしの秘密-

ボクは、ねこ。
しましまの、ねこ。
名前は、にゃんた。

ここは、ボクの家。
でも、ねこは、ボク一匹だけ。



「おはよう、にゃんた」

かあちゃん、おはよう。
毎朝、早くからごはんを作って、ご苦労様だな。



くんくん。
……ん?
くんくん。
……うーーん???

なにかがいつもと違う。

くんくんくん。
……あれ?
あれ〜?
あれあれ〜〜?



「どうしたの、にゃんた」

うーーーん。なんだろう。
いつもとにおいがちがうぞ。
我が家の朝はかつおぶしと、煮干しのにおいだ。
いつもは両方のにおいがする。
ボクの鼻は、ちゃあんとわかるんだからな。

なのに、今朝はどうしていつものにおいがしないんだろう?

「ああ、にゃんた、もしかして。
 いつものかつおぶしの匂いがしないから不思議がってるのかしら?」

そうそう。
そのとおり。
さすがかあちゃん。
ボクの鼻は、煮干しだけにじゃ満足しないんだぞ。
いったいどうしたってんだ。

「今日は寝坊しちゃったのよ。だから、だしまきたまごもちょっと手抜き」

だしまきたまご、ってあのきいろいやつだよな?
確かにあれからはかつおぶしのにおいがしてたけど……。

「お味噌汁は煮干しのお出汁を使って作るけど、
 だしまきたまごは、かつおぶしのお出汁なの。
 そうやってお料理に合わせて、色々使うのよ」

へ〜〜〜〜〜。そうだったのか。
主婦ってのは、大変なんだなあ。

「おとうさんはそうでもないけど、
 おじいちゃんもおばあちゃんも、食べ物にはうるさいから」

グルメかー。
大事だよな、うん。
ちなみにボクは、ウェットなごはんは好きじゃない。
あれはこどものたべものだ。
ボクはもうこどもじゃないからね。
カリカリしていて、風味のあるやつを頼むよ。

「今日私が寝坊しちゃったことは、内緒ね、にゃんた」

おっ? どうしようかにゃぁ。
まぁ、どうしてもというのなら内緒にしておいてやってもいいぞ。
ボクは心が広いからな。



「ママおはよー」

ひなちゃんが起きてきた。
めずらしいな早起きじゃないか。

「ひなちゃんおはよう。早いのね」

「んー……起きちゃった」

「顔洗ってらっしゃい」

「はーい」

かあちゃんはまだごはんの支度中で手が離せないだろう。
しょうがない、ボクがひなちゃんを見ていてあげるか。
ほら、洗面所いくぞ。



人間ってのは子供からじいちゃんばあちゃんまで、
朝から晩まで忙しそうだ。
だからボクが、みんなのサポートをしつつ、
この家を守ってやらないと。
飼い猫ってのも、楽じゃぁない。

さあ、今日も一日が始まる。
がんばっていこうじゃないか!