作:早川ふう / 所要時間 10分 / 比率 0:2 20130313 利用規約はこちら
背徳の恋はタクトの下(もと)に -とある吹部の百合模様3-
【登場人物】
西野愛(にしの めぐみ)
高校3年生。吹奏楽部の副部長でパートはパーカッション。
中田薫(なかた かおる)
吹奏楽部顧問の生物教師。27歳。
薫 「やめてちょうだい、西野さん。……ここは学校よ」
愛 「やめて、なんて思ってないくせに」
薫 「そんなこと」
愛 「我慢できなくなりそう?」
薫 「っ……」
愛 「ほんと、先生って可愛い」
薫 「なにがっ……」
愛 「でもだめですよ?ここは学校なんですから」
薫 「だからやめてって言ってるじゃないの……」
愛 「言いながら、もっとしてほしいって思ってるんですよね?」
薫 「思ってないわ……」
愛 「大人は嘘つきですよね。でも、先生の身体はとっても正直だから」
薫 「っ! や、やめて……」
愛 「何もしてませんよ? ただそっと触ってるだけじゃないですか」
薫 「……っ……ん……」
愛 「生徒が先生にちょっと触ってるだけです。
腕や指先に触れてるだけで、
別にキスしてるわけでも、襲ってるわけでもないじゃないですか。
問題ないですよね?」
薫 「ふ、普通は、ないけどっ……」
愛 「ないけど?」
薫 「だって、西野さんは、あきらかに、その……違う意味で触ってきてるでしょっ」
愛 「違う意味? わかんないなぁ……どういう意味です?」
薫 「もうっ……! どうしてそういう……!」
愛 「真っ赤になっちゃって、やっぱ先生可愛いですね。
一回りも上とは思えないなぁ」
薫 「お、大人を馬鹿にするのも大概にしなさいっ」
愛 「してませんよ? 馬鹿になんて」
薫 「と、とにかく! ここは学校で、アナタは生徒なんだからっ
離れてちょうだい! 用件はなんなのっ?」
愛 「コンクールの課題曲の楽譜をもらいに来たんです。
コピーしなきゃいけないじゃないですか」
薫 「ああ、コピーしに来てくれたのね……
えっと……、あれ、ないな……どこにやったんだっけ……」
愛 「先生ー、なくしたんですかー?」
薫 「違うわよっ、……フルスコアを先にコピーしてチェックしてたのよ、
だから棚にないだけで……出しっぱなしにしてたかな……机かしら……」
愛 「そうやって準備室の奥に行くのは
……誰にも聞かれないように、ですか?」
薫 「そういうことじゃないから!!」
愛 「学校でするのもスリルがあっていいと思いません?」
薫 「思いません……」
愛 「本当は思ってるくせに」
薫 「…………っ」
愛 「……教師って不便ですね」
薫 「そういう問題じゃないでしょう……!
……学校は、そんなことをするための場所じゃないんだから」
愛 「わかってますよ」
薫 「あ、フルスコアがここにあるから、楽譜もこの辺に……」
愛 「……いっぱい書き込んでありますねー」
薫 「そりゃあ、……ちゃんとやるわよ」
愛 「フルスコアの書き込みは几帳面なんですね」
薫 「え?」
愛 「部屋の片付けは得意じゃないのに」
薫 「……仕事はちゃんとやります、大人だからね」
愛 「ない楽器は黒で消して、パート振り分けは緑を使って……解釈の書き込みは青……
赤で記号を強調して……4色ボールペンも大活躍だ」
薫 「大変なのよ、指揮者も」
愛 「たまにはこのボールペンも、スコア以外で使ってあげたらどうです?」
薫 「どういうこと?」
愛 「……これで先生をいじめてあげようかなって」
薫 「なっ!?」
愛 「あはは、冗談ですよ、冗談。
……想像しちゃいました?」
薫 「するわけないでしょっ!」
愛 「ああ、そうですよね、先生はボールペンより、タクトの方がいいんですもんね?」
薫 「ちょっ、……あっ……」
愛 「先生のタクトで散々遊んであげましたよね?
……いっぱい濡らして、とっても気持ちよさそうだった」
薫 「やめなさい……っ……」
愛 「あ、あった。これこれ。
先生のイニシャルが彫ってある……特注のタクトですもんね?」
薫 「返しなさいっ」
愛 「だめです」
薫 「西野さんっ!」
愛 「タクトの先端で胸をいじってあげたり……
持ち手を先生のなかにいれて……」
薫 「お願い今はやめてちょうだい……こ、ここは学校でしょう!」
愛 「ふふ……じゃあ、正直に答えてくれたらやめてあげます」
薫 「正直にって……何を?」
愛 「あのあと、ちゃんと洗ったんですか?このタクト。
それとも洗わずに使ってます?」
薫 「そ、それは……」
愛 「それは?」
薫 「……あ、洗ったわよ。もちろん」
愛 「なーんだ、洗っちゃったんですか」
薫 「当たり前でしょっ」
愛 「……じゃあ今夜は、先生が舐めて綺麗にするんですよ?」
薫 「えっ……」
愛 「夜、行きますから。……鍵、あけといてくださいね?」
薫 「……今日はちょっと」
愛 「用事でもあります?」
薫 「スコア、さらっちゃわないと……」
愛 「私とどっちが大事なんです?」
薫 「……それとこれとは話が別でしょう」
愛 「ま、そーですけど」
薫 「……あ! (冷静に)……楽譜あったわよ。人数分コピー大変だけど、よろしくね」
愛 「あーあ、残念。【教師モード】に戻っちゃった」
薫 「ここは学校、あなたは生徒。私は教師で、顧問なの。
今は部活中でしょ、しっかりやってちょうだい」
愛 「はーい」
薫 「あまり大人をからかうものじゃないわよ」
愛 「……大人大人って、そればっかりですね」
薫 「え?」
愛 「子供だと思ってあまり馬鹿にしないでくださいね?」
薫 「馬鹿になんてしてないでしょう」
愛 「子供の戯言だって思ってます?
この関係、どうやって収拾つけたらいいのか必死で考えてるんでしょ?
だから大人って馬鹿なんですよ」
薫 「西野さ」
愛 「めぐみ、です」
薫 「…………めぐみ」
愛 「遊びだったら、もっと別の相手にしますよ。
それこそ、面倒じゃない相手なんていくらでもいるだろうし」
薫 「私たちは……」
愛 「遊びなんかじゃないですよ。
だから安心して。……私に任せてくれればいいんです」
薫 「…………溺れたら、どうしてくれるの?」
愛 「ちゃんと人工呼吸してあげます」
薫 「……馬鹿ね」
愛 「……じゃ、コピーしてきますね」
薫 「ええ、よろしくね」
愛 「はい」
薫 「ああ、西野さん」
愛 「はい?」
薫 「……今夜、ね?」
愛 「……ええ、今夜、です」
薫 「鍵、あけて、……待ってるわ」
愛 「はい。待ってて下さい。……甘い台詞は夜にいっぱい囁いてあげますから」
薫 「もう……」
愛 「もちろんいっぱいいじめたあとに、ね。
じゃあ、失礼します」